かべのこ 17
『さあ!全てを忘れて!魔法の国を一緒に滅ぼしましょう!』
母は真っ直ぐブレることなく宣言する!
その声には迷いもなく・・・
「オカ・・アサ・ン」
リゼと母の蜜月はとても短く、それはとっても壊れやすくて・・・
「リゼ、ここにいる者達は皆、魔法の国で生贄になったものなのよ」
「辛く、エグく、グロい、地獄を見てきた者達」
「この漆黒の穴は呪われしものの穴。全ては魔法の国を闇に葬るための復讐の穴なのですよ」
私に見せてくれた母の優しさは、もうここには無かった。一瞬だけ触れた母の優しさは音を立てて崩れていく。
母は私など見ていない。その先の復讐を見ている。
復讐という刃を研ぎ澄まし、魔法の国への鉄槌を打とうとしている。
母の胸の中で困惑な表情を見せるリゼ。
地獄から救われたのも束の間、新たな地獄が口を開いて待っている。
徐々に黒く染まっていたリゼの身体は混沌と迷いからか、急速にリゼを黒く包み込んでいく。
「オカアサ・・ン・・アタ・シ」
…母の復讐…生贄にされたもの達の復讐…そして私の復讐
そんなものはどうでもいい!
リゼは思い出していた!
幼少期の頃にあった母との暖かい思い出。
そして、私の名前を呼んでくれたこと。
「オカアサ・ン・ワタシ・・オカアサン・・トノ・オモイデ・ヲ・ワスレタク・・ナイ」
「リゼ、思い出はこれから作るのですよ」
「悪意に満ちた復讐としてね…」
そのときの母の口は凶器に歪んでいて…
「・・・ア」
リゼの身体は黒く染まった。
〜続く〜