かべのこ 5
扉を開けるとそこには華やかで豪華な大きな部屋が広がっていた。
真っ赤な赤絨毯が轢かれており、まるで男とかべのこの道標のように伸びている。
その赤絨毯の両側には兵士達がズラリと立っている。男はそれに導かれるように進み、かべのこもその後を付いていく。
歩みを進めると2つの玉座があり、そこに2人の人物が座っている。
魔法の国の王様とお妃。
この魔法の国の全てを司る者達である。
2人はその玉座の前に立った。
ガシャン!
「!」
兵士の1人が、かべのこの両腕に鎖の付いた手枷をはめ込む。冷たくてひんやりした感覚が、かべのこの両腕に降り注いでくる。
王に手を出さないようにする為のことだろう。
奴隷のかべのこに対しても厳重な警戒は劣らないように手筈を整える。
「王様、連れてまいりました」
ふと横を見ると、男は跪き敬意を払うよう丁寧な喋りで前の2人に語りかけている。
いつもの様な怒声でも冷たい冷酷な語りではない。
その事実を目の前にして、かべのこは前に座っている2人は偉い人だと理解する。
「かべのこ…と呼ばれてるらしいな」
目の前に座っている男が語りだす。
いつも命令される時に言われる「かべのこ」という言葉。その言葉を聞いて、かべのこは自分に言われてると気づく。
「単刀直入に言おう。貴様は魔法の国に開いた穴を塞ぐのだ。貴様の唯一の魔法の「壁」を使ってな」
座っている男が、かべのこに語りかける。
言葉がわからないので理解が出来ない。恐らく何か命令されているのだろう。
「よいな!」
少し強めに語られる。
どうしていいかわからないかべのこは、とりあえずとなりの男と同じ様に王様の前で跪いた。
「さっそく明日から行ってもらう」
「了解しました」
「失敗は許さぬぞ」
「かしこまりました」
自分ではなくとなりの男との会話に変わった。
この跪くので正解だったのだろう。
王様と男が会話を続けている。
おそらく自分への命令の事を話しているのだろう。
次は何をやらされるのだろう?
なるべく痛くないのが…いいな
「命令は以上だ」
会話が終わったようだ。
男は立ち上がり部屋を出る方向に歩みを進める。
かべのこもそのあとを付いていく。
チャリ。
動いた際に鳴る鎖の音。…これは外されないのか。
手枷を気にしながら男の後を付いていく。
「あなたも大変ねぇ」
「!」
背後から声が聞こえた。
さっきとは違う声、座っていた女の声だろうか。
新たな命令だろうか?
どうすればいい?
また跪いたらいいのか?
頭の中が錯乱状態のかべのこをよそに…
「…仕事ですので」
かべのこでは無く男が答える。
さっきの言葉はかべのこではなく男に向けられた言葉だった。
部屋を出ていくと、いつもの廊下に戻り、いつもの牢屋に帰っていく男とかべのこ。
牢屋に続く鉄の扉を男が開け、かべのこは牢屋に戻ろうとした。
バアァーン!!!
「!」
男は鉄の扉を乱暴に閉める!
その音にびっくりして思わず牢屋の前で座り込むかべのこ。
驚きを隠せないかべのこに男は静かに近づいていった。
…それは
…鬼のような形相で
〜続く〜