kiyoharaのブログ

巨人もそれ以外も、おもしろおかしく楽しく伝えれたらと思ってます。

かべのこ 4



「かべのこ!出ろ!」


城の地下の牢獄で男の冷たい声が響く。

鉄格子のように冷たい声が…


奴隷としての仕事をするときは、いつもこのセリフで始まる。

かべのこは黙って男の言われた通りにする。


「はい」も「わかりました」も言わない。


いや…言えない


かべのこは言葉を知らない。

そして言葉も理解出来ない。

もちろんこの男の言葉も理解している訳ではない。


男が望む行動を何回も間違いながら正解を導いてきたのだ。


行動を間違えると身体に痛みを与えられる。

それを避ける為の術を身につけただけなのだ。


牢屋の鍵を開けられると男の後ろに付き、一緒に部屋を出て行く。


部屋を出ると地下の長い廊下に出る。

真っ直ぐ長い廊下、しばらく進むと3方向の道に別れる。


右に曲がると労働としての奴隷をさせられる。

左に曲がると肉としての奴隷をさせられる。


真っ直ぐの道は行ったことがない。



今日はどっちに曲がるのだろう?



かべのこは男に付いて行きながらも、やや右よりになりながら後を付いていった。


本能的に右の労働の方が体力が温存出来る。

そう思っての行動だったのかもしれない。



…ただ



今日は右の道にも左の道にも行かず男は真っ直ぐの道を歩いていった。


「?」


かべのこの足が止まる。

何年も続けてきた行動と違うので頭より先に身体が反応してしまったのだ。


「止まるな!進め!」


男の罵声!かべのこに怒号が飛ぶ!

おそらくこの男にいつも通り付いていけばいいのだろう。


長年のここでの生活で男の言葉を行動で理解する。

かべのこにとってはこの魔法の国での新たな世界。


だが、かべのこに新たな世界の感情は無い。


ただ男に痛みを与えられまいと行動するだけだった。


真っ直ぐの廊下を進み、階段を登り、扉を開け男の後を付いていく。


地下にいた薄暗い場所とは違い進めば進むほど、周りの世界は華やかになり明るくなっていった。


明るさに慣れていないので、かべのこは自然に目を覆いながら歩を進めていく。



…そして



かべのこと男の前に大きくて豪華な扉があらわれた。男がその扉を開ける!



…そこには



〜続く〜

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