かべのこ 3
暗くて冷たい牢屋の中。
壁は苔が生えており腐臭が漂っている。
固く閉ざされた鉄格子の小さな部屋。
魔法の国のお城の中にある地下の奥底。
その箱の中が「かべのこ」の世界だった。
食事は1日に1回あるかないか…
もちろんマトモな食事ではない。
食べ残し…残り物…残飯…
それを舐めるように食べ尽くす。
「おいしい」とかの感情などなかった。
生きる為に食料を得る。
まるで獣のように食べ尽くす。
必ず食料が毎日運ばれる訳ではない。
2日間、5日間、最高では15日の間も食料が貰えないこともあった。
苔を食べ、爪を食べ、なんとか食いちぎれる皮膚を食べ、生き延びている。
ただの人として扱われている。
いつ倒れようが、いつ死のうが構わない。
そんな扱いを受け続けた。
どんなに辛くても涙は出ない。
今の生活が当たり前なのだから。
ギイイィィッ!
鉄の錆び付いた音が部屋の中に響く。
鉄格子の部屋の外にある鉄の扉が開き男が1人入ってくる。
食料だろうか?
いや違う!今日の食料は食している。
奴隷としての仕事だろう。
今日の仕事は「労」だろうか?「肉」だろうか?
「かべのこ!出ろ!」
冷たい声が部屋に響き渡った。
〜続く〜