かべのこ 14
「あなたが壊したいのは私じゃないでしょ」
黒い化物の言葉がリゼの脳裏に突き刺さる!
「ワ・・タシハ・・」
「・・・・・」
言葉が出て来ない、化物は私に記憶を呼び戻しただけ。私を苦しめて、痛めつけて、傷つけたのは・・・
この穴の外の煌びやかな外の世界。
穴の外の魔法の国。
「ウアッ!」
リゼは心を締め付けられる!
辛い日々を思い出す!奴隷として生きた日々、苦しかった日々、裏切られ希望なんてなかった日々、感情が戻った今では鮮明に頭の中でリピートされる。
「ア・・アゥッア!」
さらに締め付ける心!胸に両手を抑える!
・・・チャリ
手枷の鎖が音を奏でる。
この手枷や足枷も魔法の国で付けられた悪魔のアクセサリー。リゼには選択の自由が無かった、リゼには自由な人生が無かった・・・リゼには人生が無かった。
「あなたに見せてあげましょう」
そう言うと化物はリゼの目の前に光を放つ。
その光から外の世界が見える、そしてさっきまで居た魔法の国が見えた。
リゼはその光から外の世界を見る。
そこには美しい景色、青い空、緑の木々、小鳥のさえずり、家族、笑顔、そして平和に暮らす魔法の国の人々。
リゼには手に入らなかったものが次々と目に写っていく。
その光からの映像に目を背けるリゼ!
今の心境はまさにここの穴の中と一緒。
黒い闇に心が覆われてしまっている。
「さあ、あなたの壊したいものは何ですか?」
化物は静かにリゼに問う。
〜続く〜