かべのこ 8
私は堕ちていく…底が見えない闇の中をずっと…
…ずっと
「かべのこ!出ろ!」
いつものように男に命令される!
服がボロボロになっていても、腐臭がしていても、疲労をしていても、かべのこの扱いは変わらない。
…トクン!
その声を聞いただけで心の傷が痛む。
今までの自分では無い、かべのこはそう考えてしまう。
…もう新たな痛みはいらないのに
昨日の出来事が何もなかったかの様に男は背を向けて歩いていく。
かべのこもいつものように男の後ろを歩いて付いていく。
今日の道は右だろうか?左だろうか?真ん中だろうか?
右の道は「労働奴隷」左の道は「肉奴隷」そして真ん中の道は……前を歩く男に
かべのこの頭の中でそう整理されていた。
男は容赦なく別れ道で真ん中の道を進んでいく。
その男のあとを付いて行きながらも、かべのこの頭の中では…
…また昨日の出来事が行われる
そう捉えてしまい、自然と手枷のついた両手を強く握っていた。
場所は?痛みの程度は?時間は?
今日の奴隷としての扱いを受け入れて、どうすれば痛みをやわらげられるかを考えていた。
しかし、当然のごとく男は今日かべのこを痛みつけるつもりは無い。
男は昨日の王様に言われた通りの行動をしているだけだった。
言葉のわからないかべのこは昨日の王様の命令を理解していない。男の考えとかべのこの考えがすれ違うのは当然の事だった。
男はかべのこを外に連れ出すと、王様の言われた場所に行く。魔法の国の奥にある深い深い森の中へ。
「またデカくなってやがる!」
男が呟く。
目的地に着いた男とかべのこ。
そこには、黒く深そうな穴。
すべてを飲み込みそうな穴が広がっていた。
カシャン!
「!」
〜続く〜